熊田梨恵の独り言

「業界の利権が憲法草案内に」~市民と政治家の対話集会Common Ground②

樋口尚也衆院議員(左)、梅村聡参院議員(その右)

樋口尚也衆院議員(左)、梅村聡参院議員(その右)

自民党の憲法改正案、周辺の問題は?

司会
では、早速議論に入っていきたいと思いますが、テーマは、今騒がれている自民党の提案した「憲法改正」についてです。参加者の皆さんには、「憲法改正」について思うことを紙に書いていただきました。それを上げてください。「憲法96条改正のリスク、およびその回避策」、前文に関すること、などなど、色々ありますね。どうしよう、では梅村先生、この中から一つ選んでお話しして頂いてもよろしいでしょうか?

軟性、硬性の議論なく96条改正はおかしい

梅村さん
先に、96条含めて、2,3分考え方だけお話しさせてもらってもいいでしょうか。
まず96条について僕の立場を申し上げます。憲法改正について国民投票にかかる前に、国会の3分の2の賛成がなければ、改憲案を出せません。それを2分の1にしていこうかというのが争点になりそうだと言っています。どうも争点にしないという話も、この2,3日ありますが。僕は、この3分の2を2分の1にすることについて、明確に反対です。内容を言い出したら色々ありますが、世界の憲法には、「軟性憲法」「硬性憲法」があります。それぞれの国がどっちをとるかを決めています。外国では何回も変えているところがあります。でもそういう国の憲法をよく見ると、日本では法律に書かれているような内容が、憲法に書かれている国もあるんで す。公務員法とか内閣法とか国会法とか、そういう憲法ならできるだけ変えるハードルを下げておかないと、国を変えようとしたときに変えられないですよね。 だから「軟性憲法」をとっている国もあります。日本はそういうものは法律になっているので、憲法の条文はあれぐらいでおさまっているわけです。だから3分の2を設定しているんです。だからそこだけを取り出して、3分の2か2分の1かというのは、その国が憲法をどういう位置づけにしているかということを決めずにしているわけなので、僕は明確に反対です。
じゃ あ憲法に指一本触れてはいけないのかということについては僕はそれも違うと思います。必要な部分というのはあると思います。70年経って、変えるべきとこ ろは、3分の2の同意を取って改正すべきじゃないかと思います。どこを改正するかという話は長くなるので置いておいて、まずそういう立場だということをお 伝えしたいと思います。

憲法は国民が為政者を縛る唯一のもの

樋口さん
梅村先生がおっしゃったことと、全く同じです。憲法96条の改正は公明党は慎重だという立場をとっていますが、僕は反対しています。その理由は二つ。一つは硬性憲法ということ、憲法は唯一国民の皆様が政治家を縛る法律なんです。 他の法律は、例えばこれに違反したらこんな罰則がありますよ、とか、権力者側が国民の皆様を縛る法律です。でも、憲法は、皆さんが国の権力者に「これは守 らなければいけないよ」と言って頂いているのが日本国憲法で、法律の中の法律です。だから絶対に変えることには反対です。リンカーン大統領が150年前に 奴隷解放をして、3分の2を超えて通しました。リンカーンは一人ひとりの反対議員の良心に問い続けて、奴隷解放を成し遂げたわけです。でもリンカーンはそ の後に暗殺されました。命を懸けて憲法改正をしなければいけないと、私は映画を見て実感しました。だから簡単に軽々に96条だけを先行し、中身の何を変えるかを言わないということについては反対します。世論もついてきたと思っていますし、だから自民党さんも私たちが明確に反対と申し上げているので、参議院選挙の争点にはしないという報道も一昨日にありました。

参加者
自民党の憲法改正案がネットなどでは簡単に見れますが、それについて自分としては、権力側を縛る憲法から国民の義務を課しているようなものに見えて、基本的人権の制限をしているように見えて、僕は自民党の改正案には絶対反対です。お二人に、自民党側の改正案はどのようなものかをお聞かせいただけたらありがたいです。

業界の利権が草案に盛り込まれている

梅村さん
改正案の中には色々あるので、一つの問題提起としてですが。僕は議員に当選した直後に舛添要一さんの本を読みました。彼は元々自民党の議員さんで、憲法草案を作る時の事務局長をされていました。本には憲法の草案をつくる時に、いろんな族議員がやってくると書いてありました。色々なことを業界のために変えてほしい、というわけですね。そこまで書いてないけど、例えば高速道路をつくることは国の責務だと書いたら、その業界から褒められるわけです。憲法草案を作る時にもそういう話があちこちから出てきます。教育はどこの責務か、国の責務だと言ったら国が予算を付けないと憲法違反だとなる。それが見えないような形で、あの草案の中にはビルトインされているんですよ。あれをよく読んでいただいたら分かります。防衛は国民の責務だと、するとそれを喜ぶ業界があるんです。それで予算を優先的に付けないといけなくなるから。だから一条一条見たらいろんなことが書いてあるけど、あの草案自体に、いろんなそういうものが出てきている。だから僕があの草案はあまり好きじゃないなあというのはそういうところなんです。

それともう一点は今仰ったように、憲法は為政者に対して国民が獲得するものです。それが国民の義務を課すものが多過ぎる。これはノスタルジーみたいなもので、国民側の権利を確保するという形になっていないので、政党が違うから言っているのではなく、多分憲法改正の時に党議拘束が外れると思うんです。党議拘束というのは何党だからこうしようじゃなくて、「あなたどう思いますか」と聞かれるということです(編注:議案の賛否について、政党や会派の決議が議員を拘束する原則のこと。信条、思想に関わるものは外れる場合も)。そういうことから言ったら、僕は同じような感覚であの草案を見ています。ちょっと総花的話ですが。

憲法3原則に手入れされている

樋口さん
私からは2点あります。私は42歳、梅村先生は38歳。石原慎太郎先生などは「日本国憲法が日本をだめにした」など言われるのですが、私たちの世代は全然そんな風に思わないんですね。戦後の皆さんのおかげで素晴らしい日本を作って頂いて、その上で生活や仕事をさせていただいて、この日本に生まれて幸せです。この日本国憲法の下で日本は素晴らしい発展を遂げてきたと思っているし、世界に冠たる平和憲法だと思っています。
二つ目は、その素晴らしい憲法を改正することについて、「加憲」について公明党は積極的です、地方自治、環境権、自衛隊、など様々な問題については書き加えないといけないと思っています。でも基本的人権とか国民主権、恒久平和主義という憲法三原則は、国民の皆様がお選びになって、為政者に対して課している3つの原則。これをいじることはあってはならないと思っています。だけど自民党さんの案の中にはいじっていると思うところがあります。だから私たちはそこはブレーキを踏む役目だと思っているので、強くブレーキを踏んで、日本のこの素晴らしい平和憲法を曲げる必要はないと思っています。自衛隊を、9条2項に書くか、3項に書くかという問題はあると思います。

「日本国憲法は大日本帝国憲法を改正したもの」

「日本国憲法は大日本帝国憲法を改正したもの」

参加者
憲法は今がパーフェクトだと思いませんけど、一部の国会議員が言うように、本当に今の憲法は押し付けられたものなのでしょうか? 当時の国会の審議があったわけで、その中で吉田茂さんが9条2項について答弁したのは有名ですよね? そういった歴史的事実を捻じ曲げてまで押し付けられたと言っているような気がするんですが、果たしてそのことを分かって自民党は言っているのかどうなのか、と思いますが。当時憲法制定に関して国会の議論はあったはずだし、私も読んだことはありますが。

梅村さん
事実関係だけ申し上げると、今の日本国憲法は、大日本帝国憲法の改正案なんです。この事実がほとんど世の中に知られていなくて、大日本帝国憲法を一度破棄して日本国憲法ができたかというとそうではない。あれを改正手続きしているんですね。

でも歴史の教科書ではそう教えていない。全く新しいものがGHQから降ってきたように思われるんですが、まずそういうものが事実としてあります。仰るように、当時の立法府含めて国民が選択したものですから、この事実を皆さんに知って頂きたいと思うんです。今の若い政治家や有権者もどうしてこういう話が勢いを持ってくるのかと言ったら、戦争直後は焼け野原になって、ひもをひっぱったらここは俺の土地だと言って、地籍調査なんてやっていないんです。大阪も太閤秀吉以来地籍調査なんてやってないんです。だから線を引いてここが自分の土地だと言って生活が成り立ったり、新しい財産ができたりすることがあるんです。その時の話を又聞きするところによると、

一回ごちゃごちゃに世の中をリセットして、できれば若者を中心に世の中をリセットしようと。スクラップしようというような感覚が、そういう鬱積したものが充満してきている。その時に「憲法が押し付けだ」と言われるのがとっても都合がいいもので、だからスクラップしようという、民族主義みたいなものになってきてしまっています。だからこれは若者世代の鬱積、そういうものが憲法の話に絡められて、一部のネットメディア中心に、一部一般紙もそこに乗ってやっている。

次の世代のそういう鬱積したものをどう解決していくかということとセットじゃないかと思っています。

樋口さん
私からは一点。自民党さんの中にも様々なご意見があります。右の方もいればそうでない方も。皆さんが皆さんがそうなっているわけではなく、あまり大きな声では言えませんが、「公明党さんがんばってくださいね」と仰る方もおられます。そのことだけお伝えしておきます。

参加者
「加憲」の場合も3分の2のハードルはあるんですか?

梅村さん
もちろん、現時点ではあります。中身を変えるのも、96条を変えるのも、3分の2。だから中身をちゃんと議論した方がいいんです。