ニュース解説

119番通報したら、消防車が来る?

救急車が出払っている時に、消防車が救急現場に駆け付ける工夫をしている地域があることをご存知でしょうか? 年々増える救急要請に対応するための仕組みですが、東京の場合、平均して一日の搬送件数の2割に消防車が出動しているのです。有賀徹氏(昭和大病院長)は17日の救急医療に関するシンポジウム で、この現状について「病院前救護では救急車が行くということになっている。これはどう考えても破綻している」と話しました。

2012年の救急搬送件数は580万2039件で過去最高となり、ほぼ毎年増加で推移しています。このため、救急要請があっても救急車が出払ってしまっているなど、救急隊が対応しきれないことがあります。こうした状況を解決しようと、消防機関の6割が、消防車(Pumper)と救急車(Ambulance)で連携して現場に駆け付ける取り組み(PA連携)を行っています。各機関で仕組みは異なり、東京では救急車がいない場合に消防車が出動します。火災の場合は複数台の消防車が出ますから、消防車が一台で走っている場合は、ほぼ救急現場に向かっていると言えるでしょう。横浜市では緊急度や重傷度の高そうな要請に対して、救急車と消防車を同時に走らせ、早く着いた方が先に応急処置を始めています。

東京消防庁のデモンストレーション

しかしこれらはあくまで応急的か、より早く現場に到着するための方法。基本的に救急現場に駆け付けるのは救急車です。救急車には、医師の指示を受けて救急救命処置を行う救急救命士の乗車が義務付けられていますが、PA連携の消防車には、救命士が乗っていない地域もあります。AEDなど救急車が積んでいる資器材が積まれていないこともあります。PA連携にはガイドラインなど運用に関する基準がないため、各消防機関の独自の解釈や運用で行われているためです。消防機関からは、国に対してガイドラインの作成を求める声も聞かれます。

東京消防庁のデータを見ると、消防車の救急現場出動が常態化している様子が伺えます。2010年の救急出動件数は70万981件。このうち消防車が出動したのは12万1317件と、17%。ほぼ5,6人に1人の傷病者の元には消防車が駆けつけているのです。「東京消防庁は『破綻している』とは言わずに『頑張っている』と言う。でもこれはどう考えても破綻している」と有賀氏は述べました。

119番と言えば、救命士の乗った白い救急車が来ることを当然のように思い浮かべます。しかし、救命士のいない消防車が来るかもしれないのです。さてこの現状は、整った救急医療体制と言えるのでしょうか?